八ヶ岳の山荘に到着

2023年7月27日

 今日、妻の土屋美寧子と私は、「サマーコース」のレッスン場となる八ヶ岳の山荘に入った。大泉町の谷戸というところで、標高はおよそ1200メートル。先月準備のために訪れた時は、屋内が少しひんやりしていたが、今日はむんむんと息苦しいような熱気が立ち込めていてびっくりした。でも、窓を開けて外気を入れ、夕方になって外の気温も下がり、熱気はどこかへ逃げて行った。今は風呂上がりでガウンを着ているが、ちょうど良い快適な気温だ。
 この建物の玄関を入ってすぐ左のリビング、ここがレッスン場である。久しぶりにこの部屋に入る時、私は何か聖地に足を踏み入れるような厳粛さを覚える。1985年、義父がこの山荘を建て、私がかねてからやりたいと言っていた合宿形式の講習会を、この部屋でやってみないかと提案してくれたのだ。以来、この部屋でいったい何人の演奏を聴いただろうか。胸を打つ感動的な音、何を教えたらよいかわからないほどお粗末な音、本当に色とりどり、様々な演奏を聴き、アドバイスを与えてきた。それにしても、こんなに長く続けてこられるとは思わなかった。まずは、自分が元気でここにいられることに感謝しよう。そして、これを継続させるために、今はだれよりも大きな努力を払ってくれている美寧子にも、心から感謝しなければならない。さらに、講習会というものは、教える方にいくらやる気があっても、習う人がいなければ続けることはできない。今年も16名の受講者と数名の聴講者が集まってくれるが、この人たちにも感謝をささげなければならない。
 若い受講者のために、特別料金で貸別荘を提供してくれる会社にも、またコンサートの運営を担ってくださる地元の実行委員会や支援者の方々にも、感謝の気持ちでいっぱいだ。そのどれが欠けても、こんなに長く続けてくることはできなかった。
 さて、昨日までの東京暮らしは、連日のリハーサルと長期に家を空けるための様々な準備に追われて、「いったいこんなにまでしてサマーコンサートやサマーコースを続ける意味があるのか」と自分に問い詰めたい苛立ちの気持ちがあった。しかし、今日ここに来て、少し気持ちが変わった。頭に浮かぶのは、「今年は生徒たちにどんな話をしようか」といったアイディアや、受講者が弾く予定の曲の断片などになった。「苛立ち」が「やる気」に変わったのを感じる。明後日、長坂のホールに到着する前期受講者、11人と会うのがとても楽しみになってきた。みんな元気で、笑顔で到着して欲しい。それに応えて、私たち講師は彼らが喜んでくれるはつらつとした演奏を「サマーコンサート」で披露したい。
 明日は、演奏者が到着して午後からリハーサルである。今回は演奏の難しい曲に挑戦するため、6回という異例の数のリハーサルに付き合ってもらった。その結果を出すための仕上げとして、明日は最後の練習である。
 1年に1回、ここだけで一緒に演奏する仲間とのアンサンブルが、今年も実現する。なんと嬉しいことではないか!この喜びがホールの隅々まで伝わって、お客様にも心から楽しんでいただける音楽を提供できるよう、まずは明後日のコンサートに向けて集中だ。