明日はコンサート

2010年10月10日

 10月も10日が過ぎた。どんどん秋が深まって行く。そして明日は、アフタヌーンコンサートである。

 2週間にわたって、私は明日演奏する曲の練習に集中した。もちろん、もっと前から練習してはいたが、この期間は他の曲をほとんど弾かず、ベートーヴェン、シューマン、ブラームスの曲のことだけを考えて過ごした。

 妻の恩師で私も敬愛していたもとフライブルク音大教授、ヘルムート・バルト氏は、「演奏会の前はゆったりと、そこで弾く曲のことだけを考えて過ごしたい」と言っておられた。それは、私たちがスイスに住んでいた30年近く前の話である。フライブルクでバルト先生やそのお仲間に加えていただいて、室内楽を演奏した時、私はスイスから泊まりがけでフライブルクを訪ねて、まるで合宿のようなリハーサルをした。

 だが、日本での生活は忙しく、重要なコンサートが近づいたといっても、なかなかそのことばかり考えてゆったり過ごすことはできない。いや、できなかった。ただ、最近は少しずつ仕事の量が減ってきたので、ちょっとスケジュールのやりくりをすればそういうことが可能になった。今回も、時間はさほど長くなかったが、私はかなり明日の曲に集中し、できる限りの準備はした。岩崎洸さんとのリハーサルも、今月4日から本格的に始めて、今日を含めて4回、通常のコンサートより多めにやって、いろいろな角度からディスカッションをした。毎回さまざまな発見があり、互いの意見を出し合って本当に楽しいリハーサルだった。

 このような勉強には、決して「これで十分」ということはないが、もうじたばたしても仕方がない。後は明日、3人で積み重ねたことがどんな結果を生むのかを楽しみにしながら、思い切り弾くだけである。お客様にも、そのような私たちの音楽の営みを、ゆっくりお楽しみいただきたいと願っている。

 天気が良さそうなので、来てくださる方々には良かったが、「雨になったら体育系のイベントが中止になってこちらのお客様が増えるかな」と不届きなことを考えた罰が当たるかもしれない。とにもかくにも、多くの皆様が東京文化会館へお集まりくださることを祈るばかりである。