23日の発表会は、皆熱のこもった演奏をしてくれ、幸福な気持ちで聴いていた。いつもは中央の通路より少し後ろで聴くのだが、今回は通路のすぐ前の席、前から5列目に座った。そのせいか、皆のやりたいことがストレートに伝わってきて楽しかったし、それぞれに成長していることがはっきり感じられた。
ヴァイオリンは、とても奥の深い楽器だ。一応弾けるようになっても、微細な音程を正確に取るとか、より良い音色を作る努力をするとか、やることはいくらでもある。さらに、技術的には完璧でも聴く人にとって面白みのない演奏では困るわけで、まさに一生勉強ということだ。生徒は一人一人個性が異なるし、ヴァイオリンと取り組む姿勢や家庭の環境も違う。教える者は、それぞれの生徒にとって今何が最も必要なのかを判断し、適切なアドバイスを与えることが大切な役割なのだと思う。
ただ、こちらも生身の人間だから、いつも完全に客観的な判断ができるとは限らない。自分がその生徒に対して、「こうあって欲しい」と願うことを押しつけてしまう場合も、全くないとは言えないだろう。こちらの願望と生徒の望みが一致していれば、たとえ時間はかかっても道は開けてくる。だが逆に、やればやるほど生徒との溝が深まってしまうケースもあった。その生徒にとって、今の私の立ち位置は大丈夫なのか、これからどう接して行けばよいか、そうしたことを考えさせられるのも、年に一度の発表会での演奏を聴く時だ。
今回は、昨年に続いて演奏した7人全員が、何かの形で昨年より進化した音楽を聴かせてくれたことが、なによりも嬉しかった。また、最近レッスンを手伝うようになって、初めて参加した小学6年生は、意外と大人っぽく、しかも自然な演奏で感心したし、7年ぶりにカムバックした愛知県のヴァイオリニストも、熱演で喜ばせてくれた。今回の演奏を最後に、とうぶん子育て休暇に入る人もいる。「きっと、彼女はお腹の子供のために弾いているのだろうな」と、そのひたむきな音楽を聴きながら感じた。
今、定期的にレッスンをしている生徒は4人。早い人は、もう明日からレッスンを再開する。数年前まで毎週10人以上を教えていたことを思うと、ずいぶん生徒の数は減ったが、それだけ自分の勉強をする時間や、音楽について考える時間は増えたようにも思う。これまでの経験を生かしながら、指導者としての私ももう少し進化したいものと、欲張った願いを抱いている。
発表会を終えて
2013年1月25日