秋の夜長に

2011年10月18日

何をしていても時は流れる。夜が来て、また朝になる。それを繰り返して、季節が進んで行く。

今年が後2ヶ月半しか残っていないなんて、どうしても信じられない。どうしてこんなに時間の経つのが早いのだろう。「年を重ねるとだんだん早くなるんだ」と聞いたことがあったが、どうやら本当らしい。

震災のために3週間も開幕が遅れた今年のプロ野球だったが、選手たちは懸命に過密な日程をこなし、レギュラーシーズンがほぼ終わった。後はクライマックス・シリーズと日本シリーズだが、11月になっても野球が楽しめるというのは、無責任な1ファンにとっては有り難いことだ。でも、最後まで戦う選手は本当に大変だと思う。野球がなによりも好きな人間として、彼らの健闘を祈らずにいられない。

私は、その野球が終わる頃から猛烈な忙しさとなる。と言っても、若い頃はこの程度の日程を平気でこなしていたが、久しぶりにやってくる本番の連続には、気を引き締めて臨まなくてはならない。同時に、その一つ一つでしっかり結果を出し、自分をアピールしたいところだ。12月になれば、バッハの無伴走CDが発売され、その無伴走ソナタとパルティータ全曲を弾くという、マラソンのようなコンサートを12月23日に開くと、それで今年は終わりである。とにかく、悔いのない日々を過ごしたいと願っている。

ところで、昨日はフランスの名教師、ジェラール・プレ氏のマスタークラスを聴きに行き、初めて直接お会いしてお話しした。私の生徒が受講したので出かけたわけだが、私よりたぶん5・6才年上のプレ先生は、非常に元気でバイタリティに溢れたレッスンをしておられた。なによりも感銘を受けたのは、先生が弾かれる音のつややかさ、その上品な音楽であった。もちろん、生徒に模範を示すために曲の断片を弾かれるだけだが、ヴィブラートの効いた美しい音、しなやかな右手、そして正確な音程と、すべてにおいて刺激的だった。

先生は、まだ幼いと言ってもよい私の生徒に、最大級の賛辞を与えてくださった。厳しくしようと思えば、おっしゃりたいことはたくさんあったと思うが、全体的な方向が間違っていないということで、褒めてくださったのだろう。そこには、同行した私への敬意が込められていて、大変感動した。私もいろいろな先生をお手伝いして、その生徒さんを見ることがあるが、いつもその先生に対する尊敬の念を表しつつレッスンをすることが大切だと、昨日の経験から強く感じた。

素晴らしい人との出会いは、いろいろなことを教えてくれる。一方で、いらいらさせられる人との出会いや共同作業は、つらいことも多い。だが、その両方が我々を成長させてくれるのに違いない。できるだけ多くのものを素直に受け入れ、自分に取り入れて暮らして行きたいと思うこの頃である。