今年も、バッハシリーズが終わった。入場者数を集計した結果、およそ6割の入りとのことで、少し寂しかったが、バッハを愛好する方々が集まってくださったことがよくわかる非常に温かく強い反応が返ってきて、「このシリーズを続けていてよかった」と満足の気持ちで帰途に就いた。演奏には不本意な点もあったが、そうしたところを改善して、また1年後に聴いていただきたいと思う。
今日、嬉しかったことの一つは、何人もの昔の教え子と再会できたことだった。ドイツ、フランス、イギリスなどから一時帰国中の人もいて、それぞれが元気に活動していることを知り、彼らの成長に関わることのできた喜びを味わい直した。
国内組も、なかなかよく頑張っている。25年ほど前に初めて私のレッスンを受けに来たIさんは、子供が小学校に入学したのを機会に活動を再開し、プロのオーケストラで働いたり、20人もの弟子を指導していると言う。また、桐朋芸術短大に社会人学生として入学し、今年の春まで教えたSさんは、音楽教室に就職して、アマチュアの人たちの指導を始めたと話していた。彼女は、一般の大学でオーケストラに入っていたが、その後OLとなったものの、どうしても専門的にヴァイオリンを学びたいと考えて短大にやってきた。そして、念願が叶って音楽関係の職を得たのである。
私は、生徒を指導するとき、いつも「これでよいのだろうか」と心の中で自問自答を繰り返している。時には、生徒から満足な結果が返ってこなくて自信を失いかけることもある。だが、私の関わった弟子たちがこうして強かに活動している様子を見聞きすると、元気を与えられる。「私のレッスンから何かを学び取ってくれているのだ」と思える幸せは、何物にも代え難い。その意味でも、今日は幸福な1日であった。
アルコールにまったく強くないくせに、今夜は酒を飲み過ぎて、酔いつぶれてしまった。だが、それは幸せな酩酊であった。明日からは、またたくさんのレッスンをしなければならない。だが、その一つ一つが生徒たちの血となり、肉となるのだと思うと、元気が出てくる。29日まで猛烈に教え、それから年賀状を書き、私のノルマである窓のガラスふきをすれば、新しい年がやってくる。そこまで、もうひとがんばりである。
この日を終えるに当たって、無事に今日の演奏を終えることができた喜びに感謝し、お集まりくださった皆様に心からお礼を申し上げたい。明日はクリスマスイブ、そして25日のクリスマスがやってくる。これをお読みくださるすべての方々に、「メリークリスマス」のメッセージをお送りし、今日の日記を閉じることにする。