デビュー50周年記念日に寄せて

2013年12月12日

 今日は、私にとって記念すべき日。ちょうど50年前の今日、日本フィルの定期演奏会のソリストとして日本でのプロデビューをした日である。18才の若造が「とにかくヴァイオリニストになるんだ」としゃにむに勉強していたあの頃……。無性に懐かしさがこみ上げてくる。
 50年目の今日は、近くの田園調布教会・クララ聖堂で、武久源造さんとのデュオによる「クリスマスコンサート」を開いた。来週のバッハシリーズの練習を兼ねた本番だが、無伴奏は弾かず、バッハのソナタ3曲とコレッリの「フォリア」を演奏した。
 この教会でのコンサートは9回目。ほとんどは無伴奏だったが、今日は武久さんにも話をしていただき、それがとても面白い内容だったこともあって、会場の雰囲気がいつもより和やかなものになり、「やはり一人より二人がいいな」と、彼との共演の楽しさを実感した。
 私はそれほど強い楽観主義者ではないが、楽観主義を貫くことをモットーとしている。昨日、武久さんとのリハーサル中にいささかもめた時、私は「1たす1が2以上になってこそ、共演には意味があるんだ」と述べた。彼は「でもそれは難しいことだね」と悲観的だったが、私はそうは思わない。誰かと共演する時は、最終的にお互いがハッピーになり、なおかつ、演奏内容も一人では絶対できないような中身のあるものになると信じて取り組んでいる。そして、今日はその答えが出せたと思った。
 武久さんと私は、性格がずいぶん違うし、音楽的な考え方が一致しないところもある。だが、その違いを認め合った上で一つの音楽を作るために努力する価値のある共演者だと、私は信じている。そして、それが間違えでなかったことが、今日ははっきり証明された。これからさらに練り上げて行けば、21日はさらに内容の濃いデュオが実現するだろう。
 また、今回のバッハシリーズでは、無伴奏も2曲演奏するので最近になくカラフルなプログラムを楽しんでいただけると思っている。まだまだチケットは残っているが、こちらの方も、後1週間で大きく伸びてくれますようにと、神様にお祈りしている。とにかく、集まってくださる方々にはバッハの素晴らしさと共に、新しい年への希望と祈りを届けることのできる演奏を目指してしっかり準備をしようと、気持ちを新たにしている。