明日からの「室内楽短期セミナー」を前に、私たちは泉郷の山荘にやってきた。あいにくの雨降りとなったが、去年の8月21日に名残を惜しみつつ去った泉郷に、また戻ってくることができたのだ。
途中の小淵沢では、数年前からお世話になっている進藤さんご夫妻をお訪ねし、美味しいコーヒーや地元産のプラムなどをご馳走になりながら、種々の打ち合わせをした。セミナーを締めくくる発表会とそれに続く昼食会は、ご夫妻のご尽力で3年前から続けさせていただいている。また、もっと大人数が集まる「サマーコース」の初日の夕食と、小淵沢でのさよならパーティーも、進藤さんのお計らいで続いている。今回は、初日の夕食がコンサートの打ち上げを兼ねた30人以上の集まりになるので、美寧子はコンサートの後半が始まったらそちらの準備に行くつもりでいたが、「こちらで手伝ってくれる人があるから、すべてお任せください」と言っていただき、私共々心底ほっとしたのであった。こうした地元の方々のご親切が、サマーコースの25年を支えて下さっているのだ。
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一方で、参加者が宿泊する山荘や締めくくりのコンサートを行う施設は、(株)泉郷が管理している。そうした場所があるからサマーコースができるわけだが、会社側としては、夏の時期には少しでも収入を上げなければならないという命題を背負っている。サマーコースを始めた頃は、宿泊費などにも破格の便宜供与をいただいていたのだが、それが少しずつ見直され、そのたびにこちらの財政が厳しくなってきた。私は、せっかくともし続けてきた音楽の火を消したくない、と強く思っているが、その願いは、経済を優先する考え方の人たちにはなかなか伝わりにくい。お互いに歩み寄りながら、なんとかコースが継続できるようにと、ひたすら祈るような気持ちだ。
これまで「ヴァラエティーコンサートや「ミニコンサート」を開いていたホールが使えなくなり、別の建物にピアノを移動させた。以前より狭いスペースなので、どんな響きになるか少し気掛かりだが、とにもかくにも今年は練習とコンサートの場所を提供していただいた。だから、将来を心配する前に、まずは今年のコースを成功させることに集中しなければならない。明日はセミナーの受講者が到着する。去年は開始日が大雨になったが、今年はそんなことにならないようにと願っている。皆との出会いが待ち遠しい今夜である。