不覚にも…

2013年1月10日

 昨日は不覚にも、生徒に雷を落としてしまった。怒ってはいけないといつも自分に言い聞かせながら教えている私。最近はずいぶん穏やかになったと昔の生徒から驚かれているぐらいなのに、昨日はどうしたのだろう。突然、心が切れてしまった。
 それも、生徒がなにか悪いことをしたとか、嘘をついたとかいったことではなく、単に小さなミスを重ねただけのことだった。でも、発表会が2週間後に迫っているのに、なんとなく親身のない演奏をしていて、困ったものだと思っているところへうっかりミスが続いたため、「なんだ、それは!」ということになってしまった。
 その男の子は、最近かなり腕を上げ、今年の演奏にはこれまで以上に期待をかけているのだ。ところが、ちょっと私が注意すればできるくせに、次のフレーズでまたあやふやな弾き方をする。本番はやり直しができないのだから、2度目に弾けてもだめなのだ。1回でちゃんと弾けるように、事前の練習が大切なのである。
 最近の若者は出世欲がないとか、向上心が足りないとかよく言われる。そんなイメージと彼の演奏が重なって、つい怒鳴ってしまった。「やればできるのに、なぜちゃんとやらないんだ」と。でも、後味は良くなかった。もちろん、私は体罰など加えていないし、すぐに落ち着きを取り戻して、「君に上手になってもらいたいからこそ怒ってしまうんだよ。もう少し気を付けて練習してみようよ、かならずできるから」と諭して返した。だからもう気に病むことはないのだが、怒ってしまった自分の精神状態を少し心配している。
 次回のレッスンで彼がより良い変化を見せ、活気のある演奏をしてくれれば、私のもやもやも晴れるだろう。発表会を控えている生徒たちは、くれぐれも健康に注意し、良いコンディションで演奏に臨めるよう自分をコントロールして欲しい。そして、寒い中を聴きに来て下さる方のために、ヴァイオリンの素晴らしさと、それぞれの生命の輝きを表現して欲しいと願っている。