久しぶりのブログ

2018年11月26日

 前にこのページに書き込みをしたのがいつだったかほとんど思い出せないほど、月日が流れてしまった。私は元気で、秋の仕事を一つ一つこなし、そして冬になった。この間の様子をいろいろ皆さんにお伝えしたかったのだが、どうも最近の私は疲れやすくて、練習や事務的な仕事を終えると後は寝るだけ、といった毎日が続いているのである。深夜になって机に向かいパソコンのキーをたたき続ける、といった根気がどうもなくなってきた感じなのだ。これは困った傾向だが、とりあえずは自分の生活を第一に、と考えて暮らしている。
 秋は、いろいろ貴重な経験をした。アフタヌーンコンサートでの岩崎洸さんとのトリオ、震災以来初めて訪れた東北でのコンサート、PTINAステップでの「室内楽勉強会の発表」、大分での2度の演奏会、母校の高校を訪問しての特別授業、などなど並べてみるとけっこうたくさんの仕事をこなした。ヘレン・ケラー記念コンクールの審査に出かけたり、竹澤恭子さんやアナ・チュマチェンコの演奏会を聴いたのも、忘れ難い出来事だった。
 そして、この間に何人もの知人や先輩、親戚を喪った。少しずつ周りから人が居なくなって行くような寂しさを味わった、そんな秋でもあった。
 今、私は少し疲労感を持って暮らしている。それは、数日前に受けた大腸検査の後遺症化も知れない。だが、ゆっくり休んでいる時間はない。
 12月5日には、珍しくサイトウ・キネン・オーケストラの東京公演があり、夏に松本で演奏したチャイコフスキーのシンフォニーがプログラムに含まれていたことから、私も参加することにした。ドイツ・グラモフォンの創立120周年記念のガラコンサートだが、東京でオーケストラ・メンバーとしてステージに出るのは18年ぶりのことだ。
 夏にやったといっても、3カ月経てば細かいところは忘れている。変な勘違いなどしないよう、しっかり譜面を読んで頭に叩き込まなくてはならない。
 楽譜を見ながら弾けない以上、私が演奏するためには暗譜が必須である。慣れた仕事だが、それは地道な作業だ。
 右手を点字の譜面に乗せて指で楽譜を読み取り、数小説を頭に入れると、手を離して弓を持つ。今頭に入れたところをヴァイオリンで弾いてみる。もう一度弓を左手に持ち替え、右手で楽譜を読み返す。今弾いてみた音で間違いがないか、弓の方向も合っているかなどを確認し、大丈夫と確信できれば先へ進む。根気強くそれを続けるのだが、1時間もやると疲れてくるので休憩を取る。今回は、3日間でシンフォニー全曲の譜読みを完了した。リハーサルは12月2日からなので、それまでは折々に練習をかさねて行くことになる。
 コンサートでは、ヴァイオリニストのアンネソフィー・ムターがソリストとして登場し、3曲を私たちと演奏する。私は、ベートーヴェンのロマンスとサン=サーンスの「序奏とロンド・カプリチオーソ」に乗っているので、これらも暗譜するわけだが、ソロパートはしょっちゅう弾いているもののオケパートは初めてなので、けっこう苦労している。間違ってソロパートなど弾いてしまわないように、注意深く覚えておかなければいけない。頭の疲れる仕事だが、もうすぐ仲間に会えると思うと、やはり楽しみだ。小沢さんは、サン=サーンスの指揮をされる予定だが、お元気で姿を見せてくださることを祈るのみだ。
 勿論、暗譜ばかりやっているわけではない。12月23日に迫ったバッハの無伴奏リサイタルの準備も、おろそかにはできない。これは大事な自主公演なので、プログラムの「曲目解説」も自分で書くことにしているから、締め切り間際になって慌てないように準備しなければいけないし、1月11日に開く門下生発表会の演奏順も決めなくてはならない。用事は目白押しだが、いらいらせず落ち着いた心で、一つ一つ黙々とやって行くしかない。
 ただ、私は「仕事人間」ではないので、無理やり時間を作ってはいろんなことに手を出す。今朝も一頻りスポーツ紙の野球の記事に読みふけったし、本もいろいろ読んでいる。あまり仕事のためになる本ではないが、どうも気分転換なしに生活できないのが私の性癖らしい。
 3日前からは、ロバート・ホワイティングが書いた「和をもって日本と成す」という、日米の野球の違いを通して互いの文化を理解することの難しさを説いた本を読んでいる。30年も前の本なので、今の日本はだいぶ変わったとは思うが、実に考えさせられることが多く書かれた本である。自分の生徒に対する接し方などを振り返ると、「やはり俺は日本人なんだな」とつくづく思ってしまう。
 欧米では、音楽大学の先生と生徒がファースト・ネームで呼び合うこともよくあるようだが、私はやはりファースト・ネームで呼ばれることには抵抗があるな、と思ってしまう。そんなことをあれこれ考えているほど暇ではないのだが、忙しい時にかぎって頭があっちこっちといろいろな方向に回転してしまうのは困ったものだ。
 今週は生徒のレッスンが10駒、病院へ検査結果を聞きに行ったり、修理中の楽器を取に行ったり、そして日曜日からはサイトウ・キネンが始まるという、私にとってはなかなかタイトな1週間だが、積極的な気持で明るく乗り切りたい。このブログやFBへの書き込みも、もっと積極的にやって行きたい。寒いのが嫌いな私だからこそ、前向きな明るい自分を持ち続けることが大切だと思っている。