新春発表会を終えて

2021年1月23日

今日は冷たい雨の土曜日。私は昨日の生徒の発表会を無事に終えて、ほっと一息、一休みの1日だ。コロナ禍での発表会がどうなるか、全員がちゃんと参加できるのか、自分が感染したりしないかと、必要以上に神経を使って、なんだか苛々と過ごしていたが、今日はなんとなく今までより楽に呼吸ができるようになった感じだ。
 お正月は、夫婦別々の任地で働いている甥とその奥さんが訪ねてくれたり、美寧子の母を訪ねたり、落ち着いた日々の中で一応正月気分を味わった。しかし、7日にはワシントンで国会にデモ隊が突入したり、東京などに緊急事態宣言が出されたりして、正月気分がすっかり失せてしまった。早速、2月2日の夜に予定していた美寧子のグループの発表会が、会場の夜の使用が禁止されたため開催できなくなってしまった。時間を繰り上げて昼間の開催にするか、それとも延期するかで、出演者と美寧子の間の話し合いが続いた。
 私は、彼女のところへレッスンに来るピアノの人達とは繋がりが深く、毎年この発表会を聴きに行って一人一人の演奏へのコメントを書いている。そうしたこともあって、彼女たちの連絡網に入れてもらっているのだが、今はフェイスブックのメッセンジャーを通じて、連絡が行われている。メッセンジャーに新しいメッセージが入ると、私のiPhoneが「ピーン」という高い音で知らせてくる。7日と8日は、何度もその音を聴いた。そして、会は4月23日に延期された。
 他人事ではない。1月22日の私の発表会は、どうしたらよいだろうかと、私の悩みが始まった。こちらは民間の、しかも小規模のホールを予約しており、ホール側は閉館の予定はないと知らせてくれた。観客を半数にすれば、予定どおり開いてくれて差し支え無し、とのこと。しかし、それで良いだろうか?せめて8時頃には全員が家へ帰れるように時間を早めるべきではないだろうか、と私の悩みが始まった。
 一人で考えていても仕方がないので、出演者にアンケートをした。最初に聞こえてきた意見は、「7時ごろに終わって帰宅するより、9時に終わる方が、きっと電車も空いているから気が楽だ」というもの。他にも「繰り上げに賛成」「いっそ延期がよいのではないか」など、意見が別れてしまった。そして、2日間考えあぐねた末、私は予定どおり6時半からの開催を決めた。出演者には、「当日まで今よりもっと感染症対策を徹底し、当日のホールでも、マスクを必ず付けること、控えめに会話することなど、十分注意を払って欲しい」と伝えた。
 迷いを振り払うことで少し気持ちが楽になったのだが、世間を見れば、感染を心配して外出を自粛する人、感染などあり得ないというように平気で出歩く人、心配だが出歩かざるを得ない人など、千差万別、そして感染は減らないし、街の人手も減らない状態が続いた。出演者の保護者の職場で感染が出たと聞いて震え上がったが、その保護者はPCR検査で陰性となり、事なきを得た。
 私は、凝り固まった体をほぐすため頻繁にオンラインヨガをやりながら、週に一度近くのジムでの水中運動のレッスンに行ったり、一度は電車に乗って接骨院まで行って入念にマッサージをしてもらったほかは、ずっと家で過ごし、とにかく感染しないことだけを考えていた。
そして迎えた当日、8人全員が元気で顔を揃え、それぞれに持ち味を発揮した演奏を披露してくれた。関係者以外のお客様も10人余りが集まって熱心に聴いてくださったし、ホールの設備を利用した限定公開のオンライン配信も、成功であった。「感染が心配だから聴きに行くのは諦める」と言った常連のお客様も、ライブ配信を楽しんでくれたようだった。
 不自由は多いが、このようにして我慢しながら、活動を続けていくことしか我々にはできない。早くこのような状態が改善し、もっと安心してどこへでも出かけられる日が来ることを、強く強く願うばかりである。