病室にて

2017年7月12日

 「点字楽譜利用連絡会」の集いに皇后陛下をお迎えするという大きなイベントが無事に終わり、ほっと一息ついたのもつかの間、もう「八ヶ岳サマーコース」がすぐそこまで迫ってきている。「自分は時の流れの速さに付いて行けていない」と、私はいつも感じながら毎日を過ごしている。
 毎日のように、この日記ページに書いてみたい事柄が頭に浮かぶのだが、気が付けばもう日付が変わっていて、「明日のことを考えたら、ブログを書いて寝不足になるよりは早く寝た方が良い」ということになる。それでも、寝る前に本を読んだり、ゲームをしたりして遅くなってしまうことがあり、「これならブログを書く方がましだろう」と自分を叱咤するのだが、その場になると、やはり安易な方向に流れてしまう。
 これを書き始めた当時は、今よりずっと忙しかったのに、月に4・5本のペースでブログを書いていた。ホームページのリニューアルで、あまり古いものは削除したが、私のハードディスクにはすべて保存されている。たまにそれを読み返すと、実に面白い。「よくもこれだけ書けたものだ」と感心する。今年は、月に3本ぐらいは書こうと決心して新年を迎えたのだが、なんと3か月も書くのをさぼってしまった。少し発想を変えて、もっとまめに書けるようになりたいと思うのだが、文章の浮かび方も昔よりスムーズではなくなったし、パソコンへの入力にも時間がかかるようになったのかもしれない。「寄る年波」などとは言いたくないが、それを実感することも増えているこの頃である。
 さて、八ヶ岳の忙しさを前に、私は大腸のポリープを切除することになり、昨日から入院している。狭心症で、2本の冠動脈にステントが入っていて、血液を固まりにくくする薬を飲んでいるため、これまでの大腸検査では、状態を見るだけで切除はできなかった。でも、これ以上ポリープが大きくなる前に除いておいた方がよかろう」との消化器内科の先生の意見を、心臓の主治医が了解して、薬を一時的に止めて治療をすることが決まったのだ。「やるならば、夏から秋にかけての忙しい時期に入る前に済ませるべき」と心臓の先生のアドバイスがあって、この時期の入院となった。
 大腸検査は少なくとも6度目なので、前夜からつらいことになるのはよく知っている。特に今回は、自宅ではなく病院で過ごしているため、あまり睡眠が取れない。そこでブログ、となったわけだが、少々動機が不純だろうか。
 昨日は、簡単な認知症のテストを受けた。「65才以上の患者さんには受けていただくことになっている」と、看護師さんが済まなそうに言う。65歳を過ぎてからの入院は3度目だが、これは初めての経験だった。看護師さんが言う単語を繰り返したり、設問に答えたりするのだが、「自分を無力だと思うことがあるか」の問いに、私は「はい」と答えた。「鬱があるかどうかのチェックなんですが」という彼女に、私は「はいで良い」と繰り返した。
 「もっとうまく弾けるはずなのに、なぜこんなに下手なのだろう」とか、「自分にはなぜもっと仕事をする能力がないのだろう」など、否定的な思いに悶々とする時間が、少しずつ増えている。「これではいけない」と自分を奮い立たせる気持ちもわいてくるので、まだ大丈夫だとは思うが、弱気になることが老化を早めることもあるかもしれない、と思った。
 入院で生まれたちょっとばかりの時間の空白で、私はいろいろなことを考えている。さあ、間もなく朝が来て、検査のスケジュールが始まる。良い結果を信じ、たとえ腹が痛くても、なるべく笑顔で1日を過ごすことにしよう。