今朝は、7時ちょうどに目覚めた。熟睡した満足感の中で、「ああ、ヴァイオリンが弾きたいな」と思った。久しぶりに味わう、新鮮な感覚だった。
バッハのコンサートが終わって、肩の荷を下ろした安堵と、ある種の虚脱感の中で、なかなかヴァイオリンを弾く気になれなかった。休む間もなく、発表会を控えた生徒たちが押し寄せてきた影響もあっただろう。私は、ヴァイオリンを弾きながら教えるので、レッスン中は毎日弾いていたが、それは練習とは違う。
コンサートの前は、たとえ3人、4人のレッスンをしても、夕食後に練習していた。でも、この1週間は、全く練習する気持ちにならなかったのである。それが、今朝は別の感覚が芽生えた。「練習したい」と心の中で囁く声があった。
今日は、練習曲をさらってみた。本当は、生徒がさらって来る練習曲は、私も弾いて、しっかりとポイントを把握しておくべきだ。でも、そのためには、私は1曲ずつ暗譜しなければならない。勿論、曲はほとんど聞き覚えているが、耳から入った音をただ弾くだけではダメだ。だが実際には、生徒たちが弾いてくるエチュードをすべて暗譜して弾いてみる時間的余裕はない。
今日は久しぶりに、3日前に生徒が持ってきたローデの23番を覚えてさらってみた。左指の細かい上げ下げは、今の私にも有益なトレーニングになる。できれば、明日は別のエチュードを練習してみたい。だが、それをやるには、私の場合は、指を動かしている時間より、譜面を読んでいる時間の方が長くなってしまう。実に効率が悪い。どうすれば、この問題を克服できるだろうか。
結局のところ、練習に時間をかけるしかない、ということになる。ヴァイオリン以外にもやりたいことはいろいろあるが、やはり来年も、できるだけ多くの時間を、ヴァイオリンの練習に当てる努力をしなければならないと思う。
今日の午後は、デスクの上の整理をした。忙しい時は、毎日のように送られてくる点字のパンフレットをほとんど読む気にならず、そのまま机の上に積み上げてしまうので、さながらゴミ屋敷のような状態になる。だが、それらを読んでみると、実に興味深い内容や、知っておくべき情報が含まれている。今日は、およそ2時間それらのパンフレットを読んで、ずいぶん勉強になった。来年は、できるだけ生活にメリハリを付け、送られてくるパンフレットにもこまめに目を通す、いや、手を通すことにしよう。それが頭の老化防止にも、きっと役立つことだろう。
今、私が一番やりたいこと、それは音楽にいっそう深くのめり込むことと、IT遊びにのめり込むことだ。10月のトリオの演奏会までが恐ろしく忙しかったため、一区切りついたところで、「何が何でもITオモチャを買いたい」との衝動を抑えられなくなった。それで、新しい点字ディスプレイのブレイルメモスマート、アップルウォッチ、それにアイフォーン7を買い揃えてしまった。
特にブレイルメモスマート(BMS)は、使い勝手の良いディスプレイだ。3年前にこれが発売された時、私はとても注目して体験会に出かけたが、結果は失望であった。値段の割に使いにくい、という印象を持った。しかし、その後いろいろな改良が行われ、今年リリースされたファームウェアはずいぶん使い勝手が向上していた。
それでも、使ってみると不便な点もあり、会社に要望を出したら、それを取り入れたファームウェアの試験用バージョンを送ってくれた。そこでは、見事に私の要望が反映されていた。一般公開の前に使わせてもらうのは、会社の規定に違反した行為かもしれないが、熱心に使ってみて要望を出す私の熱意にほだされて、送ってくれたのである。まさに、感謝感激だ。
このBMSは、3年前に購入した「ブレイルセンスU2ミニ」に比べて、インターネットができないという致命傷がある。だが、その代わりに、点字文書や活字文書を書く時の編集機能が、とても充実している。両方が合体すれば、夢の点字ディスプレイとなるが、なかなかそう簡単には行かないようである。だが私は、夢の実現という希望を持って、両社に要望を出し続けて行きたいと思う。そして、夢のハードウェアが出現したらそれを手にすることができるように、こつこつ稼いで行こう。
そういえば、私が元気なうちに、自動運転の車に乗って、大学へレッスンに行く、などということが実現するだろうか。もしそうなったら、私は宙を舞って宙返りするほど喜ぶことだろう。世の中はますます混沌とし、平和が少しずつ遠のいて行く恐怖を覚える。しかし、それでも私たちは生き続けなければならない。だったら、希望を持って、明るく生きて行きたいものだ。
今夜のEテレで、私が演奏したサイトウ・キネン・オーケストラのベートーヴェンが流れた。小澤征爾さんのもとに結集したオーケストラの響きは、来年への希望を象徴しているように聞こえた。来年も、気が滅入るような日もあるだろうが、私は希望を持って生き続けたい。そして、その希望をヴァイオリンの音に託して、たくさんの人たちに届けたい。今年と同じように、音楽を通しての素晴らしい人たちとの出会いが数多く訪れることを祈りながら、もうすぐやって来る2017年を迎えることにしよう。
1年の終わりに
2016年12月31日