1月が終わる

2012年1月31日

あれよあれよという間に、もう月末になってしまった。「今年こそは日記ページを頻繁に更新するぞ」と決意したのは、京王プラザホテルのツインルームを一人で占領してつかの間の「休暇」を楽しんでいるときだった。だが、帰宅してからは一度も書いていないという全くの為体(ていたらく)である。

ああ、このことについて書こう、と思いつくことはいろいろあるのだが、ついフェイスブックやツイッターに書き込んで済ませてしまう。特にフェイスブックは、いろいろな反応が返ってくるので、それらの「友達」とやりとりしたり、人の発言にコメントしたりするうちに、時間が過ぎてしまう。

もう一つ、最近の私が多くの時間を費やしているのが「読書」である。これは「リンクポケット」という携帯端末が発売され、視覚障害者向けの図書館である「サピエ」から、パソコンを使うことなく音声図書をストリーミング再生させたり、ダウンロード保存したりできるという大変な優れものが手に入ったことによる。今までだってパソコンを使ってそれらの図書をダウンロードし、さらに携帯端末に送って読むことはできたのだが、寝転がったままでも操作できるリンクポケットは、まさに私の読書環境を変えてしまったのである。

年末年始は、井上ひさしの「吉里吉里人」を夢中で読んだし、次は吉田修一の「平成猿蟹合戦図」さらに「横道世之介」と読み進んだ。音声を聴くのは点字を読むより早いし、さらに朗読された音声のスピードを上げて速聴きするのだから、スピードはずいぶん早くなる。井上も吉田も、実に面白いのでつい長時間聴いてしまっていた。だが、その反動で点字をあまり読まなくなったのは、少々困ったことだと思っている。面白いからと先を急いで読むのではなく、点字の感触と文章を同時に味わいながら、ゆっくり読む方が本当の読書だと思うのだが、今はいささか荒っぽい読み方をしている。

私にとって、今月の大きな出来事は、18日の門下生発表会と、25日の愛知芸大での公開講座だった。発表会では、10人がそれぞれ心を込めた演奏を聴かせてくれたし、生徒たちの努力もあって、お客様が比較的多かったのも嬉しいことだった。さらに、昔の生徒や八ヶ岳の受講生が聴きに来てくれたことも、私を大いに喜ばせた。

名古屋の訪問も、去年まで足繁く通っていた大学へ1年ぶりに帰ったのだから、それだけでも感激だったし、受講した大学院生たちの真摯な演奏、私のレッスンを静かに聴いてくれる学生たちとの時間は、まさに掛け替えのないものだった。終わってから先生方とお茶の一時を持ったが、「とびきりのお菓子」と出された蕨餅の柔らかな感触と味は、今も忘れられない。「お土産に」と持たせて下さったのを母にも分け、大変喜んでもらった。

17日には、旧アカンパニー・グループの人たちが集まって母の93才を祝う食事会が開かれ、私と弟もご招待にあずかった。また29日には、高校の同窓会が開かれ、北九州から同級生が上京するなど、懐かしい人たちとの再会を喜び合った。

外は寒いし、地震は多いし、政治はどうなるかわからないし、経済も不安だし、どこを向いても希望はわいてこないが、それでも私にはけっこう楽しいことの多い1月だったと思う。しかし、バッハの全曲演奏の後で、幾分気持ちがたるみ気味だったことも事実である。さて、2月はどんなことが起こるのだろう。もう少し希望の見える1ヶ月であって欲しいものだ。